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ハプティクスとは?ハプティクス技術の活用、ハプティクスデバイスの事例をご紹介!

視覚や聴覚の分野では、多様な製品が日々生まれていますが、今、視覚や聴覚の次のステップとして触覚の技術「ハプティクス」に注目が集まっています。すでにスマートフォンをはじめ、ゲーム機やVRデバイスなどでの採用が進んでいます。
本記事では、ハプティクス技術の概要、事例などについてご紹介します。

ハプティクスとは?

ハプティクスは触覚技術と呼ばれる技術で、振動により触覚を人工的に作り出し、実際に触れているような感覚を再現する技術です。振動や動きなど機械的な刺激により触覚を再現し、皮膚感覚としてフィードバックします。触覚を再現する方法として、直接触覚に刺激を与える方法のほかに視覚や力覚など、複数の感覚を組み合わせるクロスモーダル知覚といわれる再現方法があります。

ハプティクスを活用した製品で身近なものでいえば、iPhoneもその一つです。iPhoneのホームボタンは実際にボタンが存在しているわけではありませんが、ユーザーはボタンを実際に押したかのような感覚を得ることができます。
また、ゲーム機のコントローラーもハプティクス技術を活用しています。ゲームのプレイ中、ゲーム内で起こった衝撃をコントローラーを振動させることで表現し、プレイヤーへゲームへの没入感を高めています。

ハプティクス技術の活用

iPhoneの『触覚タッチ(Haptic Touch)』

iPhone 11シリーズ以降とXRに搭載されている「触覚タッチ」。以前、搭載されていた「3D Touch」は画面を強く押し込むという動作自体が使いにくかったなどの理由から廃止になり、代わりに搭載された技術です。

触覚タッチは長く押したままにするという操作によりサブメニューやプレビューなどを表示させる機能で、普通のタップとは異なり、補足的な機能を使う際に利用します。また、長押ししたときに指先に画面が軽く振動するという操作のフィードバックがあるため、通常の操作と違うことをユーザーに認識させることができます。

 

PS5

PlayStation 5の専用コントローラーに「ハプティックフィードバック」と「アダプティブトリガー」と呼ばれる2つの触覚フィードバック技術が導入されています。「ハプティックフィードバック」は従来のバイブレーションを進化させたものです。

自動車が泥道を走るときにはずっしりと重い感触があったり、キャラクターが砂地、沼、氷上といった地表面を移動するときにはそれぞれをイメージした感覚があったりするといいます。また、「アダプティブトリガー」は、弓を引き絞っていくときの緊張感のある弦の抵抗力や、マシンガンやショットガンなどの銃の引き金を引く重さなどを表現できるといいます。

空中ハプティクス

非接触で触覚を刺激する技術「空中ハプティクス」。この技術は複数の超音波を空中のある1点に集めることで、人間の皮膚で感じられる強さとなり、多様な触覚として再現します。つまり、空中で何かモノを触っているかのような錯覚を生み出す技術です。

イギリス・ブリストル大学発のベンチャー企業Ultraleapが開発した「STRATOS Explore」は、超音波スピーカーを並べた板の上の空中で何かを触っているような感覚を再現することに成功し、すでに製品の販売も開始しています。

また、株式会社ミライセンスが開発したハプティクス技術「3DHaptics」では、引っ張るや押すなどの「力覚」、固い・柔らかいなどの「圧覚」、ザラザラや凹凸感などの「触覚」を再現することを可能にしました。この空中ハプティクスの次のステップとなるのが、現実のモノのように操作できる感覚の再現であり、その技術開発が進められています。

 

ハプティクス デバイスの事例

3D Systems Haptic Devices (スリーディー・システムズ ハプティクス デバイス)

3D Systems Haptic Devicesは、PC上の仮想オブジェクトをユーザーが触れて感じることができる高精度の力覚インタラクションを実現したデバイスです。

3Dの仮想オブジェクトを操作すると、実際に触れたような感覚を得ることができます。ユーザーに視覚情報に加え、物体に触れたときに手に伝わる反力をリアルに再現した力覚情報を伝えることで、操作性が向上します。遠隔ロボット制御や外科手術リハーサルシステム、視覚障害者をサポートするアプリケーションなど、さまざまなシーンで力覚インタラクションとして活用されています。

3D Systems Haptic Devicesを開発した3D Systems社は、1986年に3Dプリンターを商品化し、それ以来、積層造形技術をリードしてきた企業です。プラスチックから金属まで対応し、ハードウェア、ソフトウェアなど、あらゆる材料ソリューションを提供しています。


〈 主な特徴 〉

  • 微細作業を可能にする3~6自由度の位置センサーを搭載
  • フォースフィードバック機構(力覚)を搭載
  • 堅いCGオブジェクトに触れたような感覚を表現
  • 入出力制御は、高速処理を実現

参考:3D Systems社製 ハプティクス・デバイス

 

 

HAPTIVITY i(ハプティビティ アイ)

京セラは、リアルで多彩な触感を再現する触覚伝達技術「HAPTIVITY(ハプティビティ)」と、電子部品を搭載した基板を3D射出成形でカプセル化するTactoTek(タクトテック)社の技術「IMSE」を融合させた複合技術「HAPTIVITY i」を開発しました。「HAPTIVITY」は、力を加えると電圧が発生する圧電効果と電圧を加えると変形する逆圧電効果を持つ圧電素子を活用し、パネルやディスプレイを指でタッチした感圧により微細な振動を発生させることでリアルな触感を実現する技術です。

また、「IMSE」とは、電子部品を搭載した印刷回路基板を3D射出成形プラスチック内に封入してカプセル化する技術です。この技術により、さまざまな電子部品を樹脂に一体封入することで、部品点数の削減や耐振動性の向上、薄型化、物流の簡素化などが期待されています。そして、リアルなボタン触感や明確な操作感を提供できるため、産業機器、医療機器、通信機器などの幅広い分野への展開を目指しています。

京セラは、2008年から触覚伝達技術の研究を開始しています。そして、圧電素子を金属板ばねに接着した「圧電アクチュエータ」を独自に生み出しました。2021年4月にはIMSEのライセンス契約を締結。現在、IMSEはフィンランドのタクトテックでしか製造できませんが、京セラはライセンスを結んだことにより、日本でも製造できるようになる予定だといいます。


〈 主な特徴 〉

  • リアルなボタン触感や明確な操作感の提供が可能
  • 従来の機械式ボタンを代替し、薄型化とシームレス3Dデザインを実現
  • 加飾、照明など、1つのモジュールとして提供することが可能
  • 複数のサプライヤーから部品を調達して組み上げる必要がなくなる

参考:京セラ、触覚伝達技術の進化版「ハプティビティ アイ」発表会 その触り心地を体感してみた

 

 

Haptic Floor

床に搭載された振動デバイスが、映像やサウンドに合わせて震える「Haptic Floor」。ユーザーごとに装置を装着する必要はなく、その床に立つだけで、臨場感あふれる没入体験を楽しむことができます。富士急ハイランドにて開催された「SEKAI NO OWARI×リアル脱出ゲーム」では、ストーリーを紹介する場面で、Hapticsによる全身で楽しめる体験を実現しました。

また、プロジェクションマッピングと赤外線センサーを組み合わせたデジタルダーツゲーム「FlashDarts」では、ダーツが的に当たった瞬間、的それぞれに異なった衝撃が再現されます。

さらに日産自動車では、Formula-Eのレーサーになって、世界の都市を駆け巡るバーチャルライドアトラクション「FORMULA E THE RIDE」に採用。実際に走行しているかのような体験を味わうことができます。
ソニーPCLは、ソニーが開発したハプティクス技術による振動デバイスを活用したオリジナルシステムで、多彩な体験を提供している企業です。


〈 主な特徴 〉

  • 映像やサウンドに合わせて床に搭載されたデバイスが振動
  • 臨場感あふれる没入体験がその床に立つだけで可能
  • リアルな触感、衝撃など、全身で楽しめる体験を演出


参考:Sony PCL Inc.、Hapticsを活用した2つのオリジナルシステム

 

 

Haptic Vest

「Haptic Vest」は映像・音響技術と統合したシステムで、ベストに搭載された振動デバイスによりユーザーはよりリアルに劇中の振動・衝撃を体感できます。Haptic Vestベストの中には10個の振動デバイスが搭載されており、振動パターンや衝撃の強弱によってさまざまな組み合わせが可能。さらに複数の振動デバイスを連動させて多様なシーンを再現することが可能になりました。そのため、映画のシーンや演出に合わせて、強弱をつけながら振動や衝撃を与えることでヘリコプターに揺られるシーンや格闘シーンでの衝撃などをリアルに再現します。

また、4Dシアターのような大規模工事をして劇場設備を造る必要はなく、劇場内の各座席にハプティックベストを用意するだけで体験が可能になるため、低コストで導入することができます。

ソニーPCLは、ソニーが開発したハプティクス技術による振動デバイスを活用したオリジナルシステムで、多彩な体験を提供している企業です。


〈 主な特徴 〉

  • 映像や音響技術と統合したシステム
  • ベストに搭載された振動デバイスにより劇中の振動・衝撃を体感
  • 振動パターンや衝撃の強弱によってさまざまな組み合わせが可能
  • 劇場内の大規模な工事は必要なく、低コストで導入可能


参考:Sony PCL Inc.、Hapticsを活用した2つのオリジナルシステム

 

 

ハプティクスのこれから

ハプティクス技術やそのハプティクス技術を活用した事例を紹介していきました。
ハプティクス技術は単に触覚による体験の質を上げたり、動作性を向上させたりするためだけでなく、ハプティクス技術を活用した機械の遠隔操作性などにより危険な作業からの解放、人手不足の解消といった課題解決に応用できる可能性が期待されています。

 

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渡部 貢生
ライター

渡部 貢生

ビジネス・経済、不動産、IT、医療行政をはじめ、飲食、旅行など幅広いジャンルで執筆、編集者として活動。また、専門紙での記者をしていた経験もある。多忙な日本のサラリーマン生活から離脱するため、“微笑みの国”タイにおよそ6年間滞在。タイではタイおよびASEANの日本人向けビジネス・経済情報誌の制作に従事。いずれ日本とタイの2拠点生活を夢見て精力的に活動中。

haruka
監修者

haruka

QAとしてキャリアをスタート。複数プロジェクトを経験し、最近は受託開発のディレクターも経験させてもらってます。JIZAIE blogではディレクションを担当。映画やドラマ鑑賞が好き。スポーツ観戦もたまに。

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